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有限会社筧建築設計事務所
(青森県黒石市)

筧正明さん、筧聡史さん
有限会社筧建築設計事務所は1994年(平成6年)に設立され、1998年(平成10年)に法人化した。住宅のほか、福祉施設や公共施設など、さまざまな建物の設計・工事監理を行っています。
従業員は3名(2026年8月時点)。代表取締役を含めても4名の少人数体制で、いずれも建築士資格を取得している。また、親子3世代で黒石市のまちづくりや次世代を担う子どもたちへの教育活動にも積極的に取り組んでいる。
今回は、代表取締役の筧正明さんと、健康経営を担当する副所長の筧聡史さんにお話を伺った。
以前から進めてきた働き方の改善や地域貢献の取組みを健康経営の視点で整理したことで、“健康経営優良法人(ブライト500)”の認定につなげている。
まずは、健康経営に取組み始めた経緯についてお話を伺った。
長年積み重ねてきた様々な取組みが健康経営につながりました 「“健康経営優良法人”の申請に向けて本格的に動き始めたのは、2024年頃のことです。正直なところ、健康経営という言葉については、保険会社から具体的な紹介を受けるまで、ほとんど意識していませんでした。これまでも当社では新しい制度の導入や申請関係はすべて副所長に任せていたので、私(筧正明さん)としては最初、『一体何をやっているのだろう』という手探りの感覚だったのが本音です。」
「しかし、申請に取り組むにあたり、改めて社内の取組みや制度を振り返ってみると、以前から、『会社としてのブランドを確立していくこと』を目標に、すでに独自に実施していた内容が多くあることに気づきました。具体的には、育児休業制度の整備や、男性社員も含めた育児休業の取得推進、イクボス宣言の実施、そして有給休暇を取得しやすい職場づくりなど、働きやすい環境づくりを地道に進めてきました。以前から国や自治体の各種制度を積極的に活用してきた経験もあり、健康経営優良法人の申請にも比較的スムーズに取り組むことができました。このようにして、長年社内制度を整えてきた積み重ねが、健康経営の評価項目にもピタリと当てはまったのだと思います。その結果、2025年の初めての申請で“健康経営優良法人(ネクストブライト1000)”の認定を受けることができました。その後、さらにストレスチェック制度の導入など新たな取組みを進めたことで、2026年には青森県内で唯一となる“健康経営優良法人(ブライト500)”に認定されるという大きな成果につながりました。」
「ただ、“健康経営優良法人”の認定を受けること自体が目的ではありません。当社では、公共施設や住宅の設計・施工といった本業に加え、学校での建築教育、地域の景観保全、黒石市のまちづくり活動にも長年熱心に取り組んでいます。従業員一人ひとりが心身ともに健康になれば、自ずと仕事の質も上がり、結果として地域への貢献度もさらに高くなっていくと確信しています。」
世代交代をきっかけに、働き方を見直しました 「現在の従業員は30代が中心です。副所長が会社に加わった頃から、徐々に従業員の入れ替わりもありました。昔の建築業界は土曜出勤や長時間の残業が当たり前という雰囲気もありましたが、若い従業員へ入れ替わっていく中で、現代の働き方に合わせて思い切って制度を変える必要があると感じました。」
「現在は完全週休2日制を定着させ、残業もほとんどありません。終業時間の17時30分になると、従業員はほぼ帰宅します。もちろん仕事はありますが、事務所にただ長く残っていても終わるわけではないので、無理に残業しない社風を大事にしています。建築設計の仕事は期限までに終わらせる責任がありますが、長時間働けば解決するとは限りません。昔は短期間で一気に完成させていた仕事ばかりでしたが、最近は働く人の休日をしっかり確保しながら進めるプロジェクトがほとんどです。特に公共工事ではその傾向が顕著になってきました。完成までの期間は長くなりますが、無理のない工程で安全に仕事を進める時代に変わってきたと実感しています。」
少人数の事業所でもストレスチェックや外部相談窓口を導入し、従業員が安心して働ける体制を整えている。
次に、ストレスチェックと健康管理についてお話を伺った。
義務化を見据えてストレスチェックを始めました 「ストレスチェックについては、いずれすべての事業所で義務化される時代が来ると思っていたので、現時点では法定義務の対象外となる少人数の事業所であっても早めに始めておこうと考えました。導入する際は、従業員が不安に思わないよう、実施する目的や回答方法を書面で丁寧に説明し、業務時間内に受検してもらいました。実施者がいる外部機関のサービスを利用し、従業員がそれぞれ自分のスマートフォンから周りを気にせず回答できる仕組みにしています。」
「当社の従業員は3名だけなので、全体をまとめる集団分析は行っていません。本人が結果をもとに自分自身のストレス状態を客観的に振り返り、必要な時にセルフケアを行ったり、相談先を自ら利用できたりする“個人の気づき”の運用を何より重視しました。」
「また、従業員が会社や家族にはどうしても話しにくい悩みを抱えた場合を想定し、24時間365日、外部の専門家へ電話などで相談できる窓口も設けています。私たちのような少人数の職場では、社内の誰かに相談すると『内容が社内に広まってしまうのではないか』と不安に感じる従業員もいると思います。だからこそ、相談内容が会社に知られることなく利用できる外部窓口を用意しておくことはとても大切だと考えています。今のところ、高ストレス判定で医師による面接指導の希望者は出ていませんが、利用している外部機関のサービスの中に医師の面接指導もパッケージとして含まれているので、必要な際に医師の面接指導につなげられる体制も整えています。」
従業員研修や情報発信を通じて、建築業界や地域の企業にも健康経営、メンタルヘルス対策を広げている。
最後に、従業員同士の交流や地域への発信についてお話を伺った。
教育と交流を目的に、建築を学ぶ従業員研修を実施しています 「従業員同士のコミュニケーションと学びの場として、全員で建築を学ぶ研修旅行を実施しています。昨年は大阪・関西万博の関連施設やあべのハルカスなどを訪れ、大規模な建築物や設備の内部を見学しました。地方で働いていると、都市部の最先端で大規模な建築物を間近で見る機会は多くありません。従業員には、できるだけ本物の建築や新しい技術に直接触れて、肌で感じてもらいたいと思っています。」
「この研修旅行は、従業員同士の貴重な交流の場にもなっています。普段は全員が車で通勤しているため、仕事の後にふらっと飲みに行くような機会はほとんどありません。だからこそ、研修を通じて自然なコミュニケーションの機会にもなっていて、チームワークを深める上でとても大切だと考えています。」
従業員が健康であれば、より良い建築やまちづくりにつながります
「2026年に“健康経営優良法人(ブライト500)”に認定された時には、私たちの取組みが地元新聞の1面や建設関連の専門紙、商工会議所の広報誌などに大きく取り上げられました。こうした認定は、ただ受けただけでは地域の方には伝わりません。積極的にメディア等へ情報提供し、当社の働き方に対する姿勢を知ってもらうようにしています。当社が先頭に立つことで、地域の企業にも健康経営やストレスチェック制度の意義について広く知ってもらいたいと願っています。」
「建築の仕事は、ただ単に物理的な建物をつくるだけではありません。地域の美しい景観や人々の暮らしを根底から支え、次の世代へとつなげていく重要な役割があります。従業員一人ひとりが、それぞれの健康状態に応じて安心して働き、力を発揮できる環境を整えることが、より良い建築やまちづくりにもつながると考えています。心身に余裕を持ち、より良い設計や建物として地域に成果を残してほしいと考えています。健康で働ける会社がこの地域に増え、黒石市に人が戻り、新しい家や建物が建てられるという活気ある流れにつながることが私たちの理想です。まずは自社から、従業員が長く安心して働ける職場づくりをこれからも実直に続けていきます。」
【取材協力】有限会社筧建築設計事務所
(2026年9月掲載)
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